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FIREを目指した理由は「燃え尽き」だった― なぜ働くことがこんなにも辛いのか

生き方

はじめに

今日は「FIREという生き方は本当にいいのか?」について考えたので、 備忘録として残しておきたい。

この記事で掘り下げたいのはFIREそのものというよりも、 なぜ私たちは働くことに対して
嫌気がさしているのか
。そしてどうすれば働き続けられるのかという点だ。

FIREはその過程で出会った、一つの選択肢にすぎない。

山奥ニートという楽園

FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取った言葉で、
経済的自立と早期リタイアを意味する。

私は会社員時代、本気でFIREを目指していた。 もっとも、最初からFIREを目標にしていたわけではない。
ただ単純に「働くのが嫌で、できるだけ少ない時間で生きていく方法はないか」と考えていただけだった。

そのときに惹かれたのが、石井あらたさんの著書『山奥ニートやってます。』で描かれていた生き方だった。

山奥ニートでは、ニートたちが山奥の廃校を改装したシェアハウスで共同生活を送っている。
集落の住民は高齢者が中心で、地域の手伝いをしてお金をもらったり、近くのキャンプ場でアルバイトをしたりして生計を立てているらしい。

YouTubeで得た知識を頼りに畑で野菜を育て、自炊し、
皆で過ごす時間と一人で過ごす時間を自由に行き来できる生活だった。

とにかく自由で、楽しそうで、当時の私は「これが理想の生き方だ」と本気で思った。

この山奥ニートという概念がYouTubeなどで広まり、 各地で似たような試みが生まれていったのも、自然な流れだったように思う。

投資とFIREの登場

それから数年が経った。

つみたてNISAの改正や老後2000万円問題をきっかけに、「老後は個人でなんとかするもの」という意識が一気に広まった。
インターネット上では投資の話題が増え、その延長線上でFIREという言葉を知った。
投資をして資産を作り、働かなくても生きていける状態になる。

それは、当時の私にとって非常に現実的で、魅力的な選択肢に見えた。

なぜFIREしたいのか

「なぜFIREしたいのか?」と問われたら、 答えはシンプルだった。仕事が嫌だったからだ。
会社で働くことが、 私にとっては何よりも苦痛だった。

学生を終えたら、あとは死ぬまで働き続ける。
そんな前提に疑問を持たずに生きてきたからこそ、 FIREという概念は大きな衝撃だった。
会社員としてお金を稼ぎ、生活費を切り詰め、余ったお金を投資に回す。

この仕組みを知ってから、 私は無駄な支出をほとんどしなくなった。
結果として、わずか1年あまりの会社員期間で、累計200万円ほどの投資信託を購入した。

そのくらい、FIREというものに強く希望を託していた。

なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか

振り返ってみると、 私がFIREを目指した理由は 「自由になりたい」からというより、
すでに燃え尽きかけていたからだったのだと思う。

会社員として働くということは、時間を売るだけではない。 感情や人間関係、時には自尊心まで含めて差し出すことになる。

理不尽な指示、合わない人間関係、意味を見出せない業務。こうした負荷は一つ一つは小さいが、確実に心を削っていく。
それでも私たちは、 「みんな我慢している」 「自分が弱いだけだ」 と考え、耐え続けてしまう。
燃え尽きは、気づいたときにはかなり進行していることが多い。

休日に何もしたくなくなり、好きだったことにも興味が持てなくなる。
それでも働けているうちは、 問題が表面化しない。

FIREという言葉が魅力的に見えたのは、希望というよりも、これ以上削られずに済む逃げ道に見えたからだ。

『Phantom』が突きつけた現実

そんな中で出会ったのが、羽田啓介さんの著書『Phantom』だった。

楽しそうに語り合っている老男性たちは、お茶やコークのペットボトルに水道水を入れたものや手製のおにぎりを持参し、低価格アパレルメーカーの作る服に身を包み、タイヤメーカーブランドのスニーカーを履き、格安スマートフォンを持っていた。

貧乏くさい。

そう感じた華美だったが、三人それぞれの金融資産が時価総額にして1億円を超えていると聞いて、驚いた。

家賃四万二〇〇〇円、と誰かが口にしたとき、華美の頭に県営住宅の光景が浮かんだ。

(『Phantom』p74-75)

切り詰めて積み立て続け、 FIREを達成しても、 その先にあるのは切り詰め続ける生活かもしれない。
今を犠牲にし続けた先にある人生は、 本当に望んだものなのか。

そう考えたとき、FIREは万能な答えではないと感じた。

私なりの結論と働き方

FIREそのものを否定するつもりはない。
ただ、FIREを目的にしてしまうと、燃え尽きの原因から目を逸らしてしまう。

大切なのは、どうすれば燃え尽きずに働き続けられるかだと思う。

完全に働かない自由よりも、無理なく続けられる働き方。
正社員であっても、 雇われ方を変える。 働く日数を減らす。 収入源を分散させる。

そうした中間的な選択肢を探していきたい。
現在無職の私だからこそ、 改めてそう感じている。
燃え尽きないこと。 それが、今の私にとっての現実的なゴールなのかもしれない。

燃え尽きない働き方とは何か

楽な働き方とは、何もしないことではない。
自分のエネルギーが回復する余地を残した働き方だ。

・人間関係のストレスが少ない
・裁量がある
・休んでも罪悪感がない
・続ける前提で設計されている

人間関係のストレスが少ないことは、会社員として働く上で最も重要な点だと思う。
会社内の空気が良く、同期や上司を「仲間」だと感じられるなら、
多少つらいことがあっても一緒に乗り越えていけるはずだ。

あの叱責は、ただミスを責めるためのものだったのか。
それとも、相手を思っての、愛ある叱責だったのか。

少なくとも私は、
ただ相手を傷つけるだけの叱責をする人と一緒に仕事をしたいとは思わない。
そして、そうした振る舞いが当たり前になっている組織にも入りたくない。

ただ、そんな組織が少なくないからこそ、
FIREという考え方が「自由への憧れ」ではなく「防衛策」として広まったのかもしれない。

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